Kleisli圏の単位律と結合律
西郷 甲矢人 (著), 能美 十三 (著) 圏論の道案内 ~矢印でえがく数学の世界~ (数学への招待シリーズ) の「第9章モナド」で、モナドから随伴を作るときにKleisli圏という圏が登場した。
この記事では、Kleisli圏の単位律と結合律についてまとめてみる。
まず、圏上のモナドとは、組であり、以下の図式を可換にするものである。
ここで、は、関手, 自然変換, 自然変換。
Kleisli圏はモナドに関連して考えられる圏である。 モナドに関するKleisli圏の対象は、圏の対象と同じであり、圏の射は、圏の射に対応する。
対象の恒等射は、圏の射に対応する。
との合成は、圏の射に対応する。
ここで、このように定義した恒等射が単位律を満たすこと、それから、このように定義した射および射の合成が結合律を満たすことを示したい。
まずは、恒等射が単位律を満たすこと、すなわち、任意のに対して、
が成り立つことを示す。
圏において、
が成り立つことを示せばよい。
の自然性を表す図式とモナドの定義に使った2番目の可換図式を組み合わせた以下の図式が可換であることから、上の式が成り立つことがわかる。
よって、恒等射が単位律を満たすことが示せた。
次に、射および射の合成が結合律を満たすこと、すなわち
に対して、
が成り立つことを示す。
圏において、
が成り立つことを示せばよい。
ここで、モナドの定義の1番目の可換図式から、以下の図式が可換であることがわかる。
よって、上の式は以下になる。
の自然性を表す以下の可換図式が書けるので、
上の式は以下になる。
射および射の合成が結合律を満たすことが示せた。
図式を書くのに使ったTexソース
\documentclass[12pt]{ujarticle} \usepackage{amsmath,amsfonts,amsthm,amssymb,amscd} \usepackage[all]{xy} \def\objectstyle{\displaystyle} \begin{document} \[ \xymatrix{ TTT \ar@{=>}[r]^{T\mu} \ar@{=>}[d]_{\mu T} & TT \ar@{=>}[d]^{\mu} \\ TT \ar@{=>}[r]_{\mu} & T } \] \[ \xymatrix{ T \ar@{=>}[r]^{T\eta} \ar@{=>}[rd]_{1_T} & TT \ar@{=>}[d]^{\mu} & T \ar@{=>}[l]_{\eta T} \ar@{=>}[ld]^{1_T} \\ & T & } \] \[ \xymatrix{ X \ar[r]^{f} \ar[d]_{\eta_X} & T(Y) \ar[d]^{T(\eta_Y)} \ar[rd]^{1_{T(Y)}} \\ T(X) \ar[r]_{T(f)} & TT(Y) \ar[r]_{\mu_Y} & T(Y) } \] \[ \xymatrix{ TTT(W) \ar[r]^{T(\mu_W)} \ar[d]_{\mu_{T(W)}} & TT(W) \ar[d]^{\mu_W} \\ TT(W) \ar[r]_{\mu_W} & T(W) } \] \[ \xymatrix{ TT(Z) \ar[r]^{TT(h)} \ar[d]_{\mu_Z} & TTT(W) \ar[d]^{\mu_{T(W)}} \\ T(Z) \ar[r]_{T(h)} & TT(W) } \] \end{document}