引き戻しと押し出し

多様体間の写像によって誘導される引き戻しと押し出しという写像に対して、以下の関係が成り立つことを示したい。

1. 関数の引き戻し

多様体 Mから多様体 Nへの写像 fを考える。

 g\colon N \to \mathbb{R}に対して

が定義できる。これを g fによる M上への引き戻しという。

2. ベクトル場の積分曲線

多様体  M (m次元)上のベクトル場

に沿った曲線を考える。

そのような曲線をベクトル場の積分曲線といい、以下で定義される。

曲線 c\colon \mathbb{R} \to M

がベクトル場

積分曲線または解曲線であるとは、

が成り立つことである。

ベクトル場の積分曲線は重要である。なぜなら、

力学の問題は, どの定式化にせよ, 基礎方程式によって与えられたベクトル場にたいする積分曲線を求めるという形で表せる 山本義隆, 中村孔一 (1998) 「解析力学1 (朝倉物理学大系)」

3. ベクトル場の押し出し

 p = c(\tau) \in M とする。  f\colon M \to N微分同相写像のとき、写像

 f によるベクトル場  X の押し出し、または、  f微分写像という。 ベクトル場は微分作用素でもあるので  g\colon N \to \mathbb{R} への作用を考える。

よって、以下が成り立つ。